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ヒトの触覚研究を通して新たな工学技術を生み出す

人間支援技術実現に向けた運動錯覚の研究​

概 要

運動錯覚とは、腱に適切な振動刺激を与えると、その筋が伸張する方向に動いたような固有感覚が生じる錯覚現象である.収縮方向に動く緊張性振動反射(Tonic vibration reflex)や拮抗筋が弛緩するAVR (Antagonist vibratory response)とは異なり,動くような気がするだけで実際には動かないという特徴がある.この現象は,筋や腱であれば体中のいたるところで生じる.この現象は1970年代に発見されているが,刺激を明確に統制した実験結果があまりなく,生じる条件は研究者によってかなりの幅がある.

 

この研究の新規性・独創性

本研究では,精度の高い加振機を用いて,押しつけ力,波形,周波数,振幅を統制して実験を行い,運動錯覚を生じさせる刺激条件を明確にする.そのために,開発した装置を下図に示す.この装置を用いて,右手首の橈側手根屈筋腱に振動刺激を与えて,その時に生じる運動錯覚を左手で表現できる.リアルタイムに運動錯覚量を求めることが出来る.

 

応用研究

脳卒中の患者に手の動くイメージ をもってもらい,他のリハビリテーションを併用する中で回復を促進するような装置が期待される.

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ヒトの触覚情報を記録するためのセンサ開発

概 要

高齢社会を迎える現代において,ヒトが感じる触覚情報を記録・再生する技術の開発は技能伝承や遠隔医療実現の観点から期待される.我々は,ヒトの人差し指の爪色変化から指腹に作用した3軸力(垂直力とせん断力)を推定するセンサの研究を進めてきた.このような人の触覚を記録する試みは様々行われてきており,皮膚振動を利用して操作者が感じる“材質感”を記録する方法や,爪色変化を利用して指腹に加わった“力”を推定する方法が開発されてきた.しかし,指腹の硬さや爪色は,外界の気温や指の姿勢,毛細血管の血流量のような身体状態の変化で容易に変化してしまい,センサを構成した環境とは異なる環境では“材質感”“力覚”の推定精度が低下してしまうという問題点があった.本研究では,指の機械特性変化や血流量変化をリアルタイムで推定する技術を開発し,その情報を用いて外部と指との相互作用を推定するというアプローチで高精度にヒトが知覚する“材質感”と“力覚”を推定する技術を開発する.

この研究の新規性・独創性

​モノを触った時の指の物理的な変形を原理として利用しているにもかかわらず,様々な条件によって生じる指の性質変化を考慮してこなかった.例えば,低温では指の剛性が高くなり,また指を曲げれば爪色は変化する.触覚は刺激で変形する皮膚を通して外界をセンシングすることを考えると,皮膚の状態推定は不可欠である.本研究では,対象との接触による指の変化から皮膚感覚を推定するために,まず指の状態ついて詳細に推定するという点に新規性があり,さらに指の状態と皮膚感覚を合わせて技能の特徴を分析しようとする点に独創性がある.

応用研究

​本研究では,卓越した技術を持つ人の技能を記録を実現するだけでなく,卓越した技能を持つ人の指の特徴も同時に記録することで,卓越した技術がどこから生まれるかを明らかにする.

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Velvet Hand Illusionの基礎調査

概要

触り心地を工学的に設計して演出する技術は新たなイノベーションを生む重要な研究課題である.これまでの研究で,触り心地の演出法としてVelvet Hand Illusion (以下:VHI)という触錯覚現象に着目し,その機序に関わる基礎調査を進めてきた.VHIとはワイヤー製の格子を両手で挟んで擦ると滑らかな面が生起する現象である.私たちのこれまでの研究から,1本線では生起せず,線で囲まれて初めて生起するVHIの特徴から「複数の線で構成されるGestaltとVHIが関連している」と考えている.Gestaltとは「部分では説明できない複合的なまとまり」とされ,視覚認識で考えられた概念である.触覚情報がプレグナンツの法則に従ってまとまり,Gestaltに触り心地が生起する一連のプロセスを解明することで,触覚情報の統合の機序解明に繋がると考えられる.本研究では,複数の触覚刺激で構成されるGestaltが脳内の認知過程の中でどのような物体面の認識となるのかを解明し,Hapticデバイスへの展開を試みる.

この研究の新規性・独創性

​この研究では,触錯覚現象を利用使用しているだけでなく,その機序を解明しようとしている点に新規性がある.これまで研究されてきたGestaltのフレームワークを活用して触錯覚現象とは何なのかを説明することを試みる.そのために,心理物理学実験だけでなく,脳機能計測実験も行っている.

応用研究

​触錯覚現象を利用して,色々な触り心地を提示することを最終目標とする.

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連絡先

komura(at)cntl.kyutech.ac.jp

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